© 武論尊・原哲夫/コアミックス1983
熱気球について
大空に優雅に浮かぶ熱気球。夢と希望をのせた乗りものはどのようにできたのか。
1783年、フランスの製紙業者 ジョセフ・M・モンゴルフィエは、暖炉の火にかざしてあった洗濯物が熱気(煙)に煽られてフワリとしたのを見たその瞬間「煙には物を空中に持ち上げる力がある」と確信し、弟のジャック・M・モンゴルフィエに紙製の「熱気球」を作らせました。当時「鳥のように空を飛ぶこと」に関心のあったモンゴルフィエ兄弟はこの「煙」をヒントに、1783年6月5日、南フランスのアノネイで熱気球の公開実験を行いましたが、この時「熱せられた空気」のことは頭になく、燃やした時に出る「煙」に空気より軽い成分があると信じていたため、熱気球の下で大量の湿ったワラを燃やしたのでした。この無人気球による実験の成功から3ヶ月後の9月19日、国王ルイ16世の前でヒツジとアヒルとオンドリを乗せた熱気球の飛行実験を行い、見事成功をおさめました。同じ時期、物理学者ジャック・A・Cシャルル教授らの「水素」を使ったガス気球も無人飛行を成功させましたが、1783年11月21日人類初の有人飛行を成功させたのがモンゴルフィエ兄弟でした。この飛行のパイロットは、貴族のピラトル・デ・ロジェと軍人のアルキ・ダランデの二人で、この時の滞空時間は約25分、飛行距離は約9kmでした。
*参考:ライト兄弟による動力飛行機の有人初飛行は1903年12月17日
飛行のすべてが冒険だった!
日本で初めて熱気球の有人飛行に成功したのは1969年9月28日のことで、京都の学生を中心とした「イカロス昇天グループ」と「北海道大学探検部」が共同で製作した「イカロス5号」という熱気球でした。この飛行は北海道洞爺湖付近で行われ、高度860mまで上昇し、飛行時間は約19分で、飛行距離は約6kmでした。またこの気球は、球皮もゴンドラ(バスケット)も設計から製作まで学生達が全て手作りしたもので、オレンジ色の球皮はポリエステル繊維の生地を家庭用ミシンで縫い合わせて作られました。このイカロス5号の初飛行から日本での熱気の歴史が始まりました。
どんな違いがあるのかな?
バスケットの中は意外と狭い!?
熱気球ってどうして空に浮くの?
球皮内の空気は、バーナーで暖められることで外の空気より密度が小さくなり、軽くなる。外の空気は暖められた空気より重くなり、下に潜り込もうとすることで暖かい空気は上へと押し上げられ、空気の浮く力が気球の重さより大きくなると、気球は空中に浮くようになる。
熱気球ってどうやって飛ぶの?
バーナーのオン・オフで球皮内の温度をコントロールしながら高度を変え、違う向きの風に乗って移動する。飛行中の球皮内の温度は通常 70〜90℃ 前後だが、夏場や急上昇するときは100℃を越えることもある。
風は、高度や場所、地形によって吹いている方向や強さが違う。時間によっても変化するため、いろいろな方向の風をさがしながら飛行して、その風を組み合わせて目的地をめざす。
風はどこからくるの?
一般的に地面に対して水平方向(前後左右)に流れる空気のことを「風」と呼び、垂直方向(上下)に流れる空気を「上昇気流」「下降気流」と呼んでいる。
地面に対して「水平方向」の空気の流れ
地面に対して「垂直方向」の空気の流れ
太陽の熱で地面や海水が熱せられ、その熱で周りの空気が暖められ上昇していく。
空気の移動による流れが循環することで「風」となる。
①:太陽熱によって暖められた空気は上昇気流となって上に移動していくと、そこにスキマができる。
②:①で移動した空気のスキマに水平方向から空気が風となって流れ込んでくる。
③:②で移動した空気のスキマに上空の空気が下降気流となって流れ込んでくる。
④:上空でも空気が流れ、③で移動した空気のスキマに風となって空気が流れ込んでいく。
熱気球でどこまで飛べるのかな?
熱気球の各飛行記録は、国際航空連盟(Federation Aeronautique International:FAI)により認定されている。FAI は世界各国の様々な種類のスカイスポーツを統括する国際機関として世界記録、世界選手権の公認や国際ルールの制定などを行っている組織で、日本では日本航空協会が日本国内のスカイスポーツ団体を統轄し、FAIと同じ役割を行っている。
熱気球は自動車と同じように大きさに種類があり、球皮の大きさで乗れる人数も変わる。熱気球に乗れる最大のバスケットは、32人乗りのものがある。(※2023年末現在)
※表示の各記録は2023年末現在、FAI および一般財団法人日本航空協会に公認されている、熱気球の記録です。
いろんな楽しみ方があるよ。
選手は決められた条件をもとに飛行し、目的の場所に近づくとマーカーと呼ばれる軽い「砂袋」を投下して、目印(ゴールやターゲットの中心)とマーカーの距離の近さで順位を競う。
競技は「タスク」と呼ばれ、目的の場所は選手が自分で決めたり共通の場所を決め、それぞれにマーカーを投下する。タスクは20種類あり、地上にマーカーを投下するタスクのほか、空中に目標となる一点を決め、そこを気球が通過するように操縦するなど、空中での操作はとても難しく、高度な操縦技術が必要となる。
お祭や地域のイベントなどで、多くの人が熱気球に乗って一緒に楽しむことができる。地面から25mくらいの高さを上下する。
大空を自由に飛ぶことができるのも熱気球の楽しみ方。他の飛行機とも調整して、空を共有しながら自然の景色を楽しめる。